自然写真家泊和幸さんと撮影に出かけました
遠別町在住の自然写真家泊和幸さん。昨年、60歳で株式会社野生塾を立ち上げて本格的に写真家業をスタートさせた方です。
泊和幸さんと出会って4年。札幌、旭川、帯広、銀座とたくさんの写真展のお手伝いをさせて頂き、今年からは<野生塾フォトサークル>という遠別町内で活動する団体も作り活動を共にしています。
協力しあうことも多い泊和幸さんでしたが、これまで泊和幸さんが活動する撮影のフィールドで撮影することは一度もありませんでした。今年初めて、撮影する機会を作っていただき、自然写真家と共に野生を覗いてみました。
撮影のフィールドへ
出発時刻は夜明け前の4時30分。まだ真っ暗闇の中、山へと10分ほど車を走らせる。この時間帯は不気味なほど静かで夜の暗闇とは違い、自然がよりくっきりと浮き彫りになっているような感覚。泊さんの撮影のフィールドへ。
午前6時くらい、少しずつ夜明けを迎えてあたりが明るくなり始めます。その頃、山の偵察部隊である1羽のカラスが『カァー、カァー、』と鳴きながら山をひとしきり飛び回る。偵察部隊のカラスが巣に戻り、さらに賑やかなカラスの団体が山を鳴きながら飛び回ります。
カラスが鳴き始めたら、そろそろ撮影の時間。カラスの鳴き声を聞いた他の野生動物たちもそろそろと動き始めるのです。
とはいえ、まだまだ警戒心の強い時間。カメラを向けるというその行為から発される気配も敏感に感じ取る野生動物を知る泊さんは、『まだ焦ってはいけない』とこの後に来るであろう撮影のチャンスに備えて目を閉じて静かに待ちます。
最初はきつねとカラスのにらめっこ
しばらく待っていると、いつの間にか目を開けてフィールドを覗いていた泊さんが『見てみな』と声をかけてきます。
するとそこには、1匹のきつねと複数のカラスが何やら揉めているようでした。
きつねの上方を飛び回り、まるで縄張り争いでもするかのようにきつねを威嚇するカラス。きつねとカラスのにらめっこが始まる。この後、しょんぼりと肩を落としたように見えたきつねがとぼとぼと去って行きました。
ここから、一気に野生動物たちが動き始めました。
警戒心の強いワシ
一度訪れたチャンス。野生のオオワシが近くに止まり、撮影の絶好の機会。『カメラレンズは早く動かしてはいけない』というアドバイスを受け、少しずつカメラのレンズを動かす。あと少し...というところで焦りが出てしまったのか、少しだけ大きくカメラのレンズを動かしたことをオオワシに察知されてしまい、飛び立ってしまいました。
なんてこった。これでもかなりゆっくり動かしていたのです。10cm動かすのに数秒を使う程度には。こんなに警戒心が強いのか!!と驚いた瞬間。
一度警戒してしまった野生動物はなかなか動き出しません。それから数時間、ただただ様子を見ることに徹します。
再度現れたワシ
待つこと約3時間。今度はオジロワシが近くに止まりました。前回の失敗を繰り返すわけにはいきません。かなり慎重にカメラをセッティング。
オオワシはまだ警戒しているのか、遠くで様子を見ています。1羽のオジロワシにカラスや他のオジロワシが近づき、エサの取り合いが始まりました。
激しく争うオジロワシと、その様子を見て隙あらばエサを奪おうとしているカラス。
野生を覗くということは
11月以降、遠別町にワシがやってきます。季節的には雪が降り始め、厳しい冬がやってくる時期。その時期からが泊さんとワシのフィールドの本番。夜明け前に動き出し、日没とともにフィールドを出る、そんな生活を40年以上続けている泊さん。
今回、1日のみですが経験をしてみて自分の処理能力を超える光景と写真の撮影枚数が残り、この活動を続けることの物凄さを改めて実感しました。
『まだ、◯◯の様子が撮れていないから写真集はまだ出さない』
泊さんと話していると、たまにそんな話になります。ワシや野生動物の奇跡的な瞬間を一枚一枚写真に収めるとともに、<まだ撮影したことがない一枚>のためにこれだけの行動をとり続けることができる精神力と子どものような好奇心がなせる活動です。
野生動物を撮影する機会はこれまでほとんどなかった私ですが、今回の経験を少しずつ私なりに咀嚼していきたいと思います。あと、レンズが欲しくなってしまいました。
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