民話と伝記
どの地域でも、何十年も生活をしている過去があるならその地域に伝わる民話や伝記があると思います。田舎、都市に限らず伝わる昔々のお話を聞くとなんだかワクワクしてきます。今回は遠別町に伝わる伝記、貝の争いのお話です。こちらのお話は、ちい記者として記事を提供させて頂いている地域手帖にも掲載して頂きました。短いお話ですが、ご覧ください。
【北海道】えんべつむかしがたり〜カラス貝とホタテ貝、ホッキ貝のはなし〜
遠別町字共栄地区パンケホロベツに伝わる話。
その昔、海から陸になったパンケホロベツの清流にカラス貝の一族が住んでいました。
名前のとおり体が黒く、美しい貝の種族ではありません。ある日のこと、カラス貝の王様が配下の貝を一同に集めて言いました。
「おれはなぁ、遠別河口や海に陣取る白い肌をしたホッキやホタテのやろうが気に入らん。やつらに一泡吹かせたいのだ。」
分厚い貝殻をぱくぱくさせてそう言いました。それもそのはず、ときどき遠別河口に行くと、「山から来た田舎者の貝だぞ。」といつも馬鹿にされていたのです。カラス貝の部下たちも「そうだそうだ、やっつけろ」といっせいに喚声が起こりました。
相談の結果、山の神様にたのんで大雨を降らせてその隙に一気に突入する作戦でした。作戦当日、カラス貝たちは我先にと遠別河口にたどり着きました。勇んで貝たちはホタテ貝に飛びかかったのです。しかし、どうしたことかカラス貝たちの体が敏速に動くことができません。ますます体がしびれ、自由が効きません。そして仲間たちはみなぐったりしています。
そのうち海からホッキ、ホタテの大群がやってきてカラス貝の大群は負けてしまいました。
負けた原因は清流に住むカラス貝が塩分を含んだ海に近い河口にまで行って戦ったのが失敗でした。この過ちをさとった王様は残り少ない貝の一族にこのパンケホロベツから一歩でも外へ出ることを禁じ、細々ながらもカラス貝の子孫をこの世に残し続けることを誓ったのです。
(引用:えんべつ民話と伝記 小山踏尾著)
今につながる昔の民話
このカラス貝との一悶着の結果なのか、現在遠別町ではホタテ漁がさかんに行われています。創作された話の中にも今につながるエッセンスがたくさんあり、それを見つけるのも楽しみのひとつ。何気なく暮らしている地域に眠る民話、まだまだありそうです。
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