積雪のおそい2018年の冬
『今年はおそいねえ』
『スタッドレスが悪くなっちまうなあ』
『こんな年はたいていまとめてどかっと来るから心配だあ』
例年に比べておそい積雪の2018年。記憶が確かならば例年、この頃すでに北海道のひだりうえは真っ白な雪につつまれて、外に出るのが億劫になっていたはず。
先日初雪が降った。降り積もった雪はいつもよりすこし多くみえて、『今年は初雪が根雪だあ』そんな言葉が街中で聴こえてきた。
雪が降ったその夜、街を散歩する。
この街の街灯はだいだい色で、冬の夜のマイナス気温をすこしだけあたたかくしてくれるような錯覚。冬のはじめは除雪車もまだ慣れていないのか、まだらにならされた道路はすこし歩きにくい。
ああ、今年もついに来てしまったか。
厚手のダウンジャケット、フードを深くかぶり手袋がわりの軍手をはめて家から1時間ほど街を歩く。軍手をはめた手でカメラを操作しながら、すこしの時間で冷たくなる軍手をポケットであたためてごまかしごまかし歩いていく。
人も車もすれ違うことなく、ひたすら歩く。町内会のゴミステーションには真っ赤なスノーダンプが設置されており、ゴミを捨てをするのにも除雪が必要だ。
イヤホンから流れるパンクロックの青臭い歌詞を聴き飛ばしながら、歩く。どうしてかこの時期聴きたくなる、学生時代に聴き続けていたバンドの曲。
北海道のひだりうえで生きていくためには、冬のきびしさを受け流すことが必要だ。本格的な冬の前には毎年覚悟を決める。冬を過ごす覚悟。
数年前、除雪をお手伝いしたひとりぐらしのおばあちゃんが口にしていた『春待つしかあるめ』という言葉はまさにそれ。家のリビングに所狭しと並べられた観葉植物が見せる緑、春が来ることを静かに待つおばあちゃん。
今年も冬が来てしまった。覚悟はできた?
居酒屋千世本のおでんは冬限定。